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メタンガスは牛が最も多く発生させるのか？
2023年2月7日　文：スティーブン・ズウィック

重量でいえば、牛が一番メタンを出すわけではありません。昆虫がそうだ。様々な昆虫がいますが、消化管にメタン生成菌を持ち、メタンを生成しています

(メタン生成菌とは、発酵によってメタンを生成する消化管内の細菌である）。ゴキブリ、シロアリ、ムカデなど様々な節足動物は、1994年のこの研究 「陸上節足動物のメタン生成に関する研究」 にあるように、すべてメタンを生産しているのです。大体200から300匹のゴキブリが牛一頭と同じだけのメタンを排出する。

1980年代初頭のシロアリに関する記事を振り返ってみると、実験室（in vitro）での実験に基づき、多くの科学者がシロアリは世界のメタン排出量の30%まで責任を負うと考えていた。

しかし、シロアリを自然環境下（in situ）で観察すると、シロアリの消化管内でメタン生成により発生するメタンは、シロアリが生息する環境の土壌や分解物中のメタン栄養細菌によって相殺されていたのである。メタノトロフとは、大気中のメタンを消化する（メタン酸化）細菌である。

牛とメタンをめぐる多くの議論の問題点は、その背景が語られていないことである。牛の腸内排出物（基本的にはゲップ）を測定する方法は、マスク、SF6トレーサー、チャンバーのいずれかである。つまり、牛の排ガスは、牛の生活環境から切り離されて測定されているのです。

よく管理された健康な牧草地では、牛は光合成（炭素は植物の根から土壌の栄養分と交換される）によって、また土地が乱されないことによってより多くの炭素を蓄える有機土壌物質を作る手助けをしています。

耕作された土壌では、炭素が大気中に放出されるため、炭素の保持量が少なくなります。また、合成肥料も土壌の炭素保持能力を低下させます。土壌の炭素が多いほど、土壌の保水力は高まります。

土壌の炭素が1％増加するごとに、深さ6インチ（※15.24cm）の土壌1エーカー（※4,046.9
㎡）あたり10,000から27,000ガロン（※37,850～102,195リットル）の水を保持することができるという数字が発表されています。

土壌の保水力が高まり、耕されなくなり、植物に覆われ続けるようになると（放牧されている草原の生態系のように）、土壌生態系はより健全になり、上記のメタン菌など土壌細菌がより多く含まれるようになります。

シロアリと同様、無傷の生態系では、放牧された草原に生息するメタン栄養生物が、反芻動物（牛、バイソン、羊、ヤギ、ヤク、野牛など）のルーメン内でのメタン生成を通じて、メタン生成生物が作り出すメタンを相殺するのだ。そうです、放牧によってメタン生成菌の活動が活発になることが研究によって示されています。

メタンや温室効果ガス全般を見る場合、数字だけでなく、生態系全体の状況を見る必要があるのです。

例えば、泥炭湿地は多くのCH4（メタン）を排出しますが、同時に多くの炭素を隔離します。熱帯林も同じです。森林の木々はメタンを大量に発生させますが、同時に大量の炭素を隔離しています。この木々が発生させるメタンをすべて相殺するには、十分すぎるほどの炭素が必要なのです。

誰もメタンの排出を理由に泥炭地の排水や森林の取り壊しを提案しているわけではない。先に述べたように、さまざまな種類の昆虫もメタン生成によって腸内CH4を生産する。これらの昆虫は何十億匹もいる。しかし、彼らも生態学的な機能を果たしているので、すべての昆虫を根絶やしにする意味はない。(鳥は何を食べるのだろう）。

野生の反芻動物についても同じことが言える。これらの動物は、無傷で機能している生態系の中にいて、すべての腸内CH4は炭素隔離とメタン酸化によって相殺されていました。

家畜の反芻動物の問題のひとつは、フィードロット（※放牧によって育成した牛を出荷前に1〜3カ月肥育させるための露天の囲い．ここで高エネルギー飼料を与えて十分肥育する）と不適切な放牧管理です。フィードロットでは、反芻動物が生態系の文脈から切り離されてしまいます。放牧が不十分だと、生態系へのオフセットの効果も減少します。

しかし、インドのこの研究が指摘するように、反芻動物が移動する場所の状況を台無しにする最大の問題は、耕作、裸地、農業生産（特に商品作物の工業生産と、一年草生産の耕作有機農業）用の合成投入物であり、これらの方法と投入物は、生態系の土壌が炭素とメタンの両方の吸収源として機能する能力を破壊してしまうのです。