歴史的データが山火事における気候の役割を否定する
マシュー・ウィエリッキ博士著 2025年10月9日
Principia Scientific International
2025年の夏の終わり、北米の大部分で山火事の季節は終息に向かっている。しかし歴史が示すように、南カリフォルニアのパリセーズ火災のように、冬でも壊滅的な火災が発生する可能性がある。
この季節的な沈静化は、山火事を取り巻く物語を振り返る機会を提供する。特に、山火事の頻度や深刻さから経済的損失への焦点の明らかな移行の中で。
最近のニューヨーク・タイムズ紙の記事「新たな研究が明らかにした、高コストで致命的な山火事の急増」はこの転換点を強調し、「気候変動による火災気象」の影響で、壊滅的な山火事が1980年から2023年にかけて4倍以上急増したと主張している。(それが何であれ – 編注)
これは新たな論文を引用しており、壊滅的な山火事が2015年以降急増し、過去10年間で最も被害が大きかった200件の山火事のうち43%が、激化する気候の極端化と関連していると論じている。(「関連している」は帰属(attribution)と同義であり、科学的根拠に欠ける – 編注)
この損害額強調の手法は、「10億ドル規模の災害」議論で用いられる戦術と類似している。焼失面積や強度といった直接指標が過激な予測と一致しない場合、増加する損害額が特に強調されるのだ。
IPCCは第6次評価報告書(AR6)に至るまで、気候変動が山火事の頻度と深刻度を増幅すると予測してきた。しかし観測データは異なる実態を示している。世界的に見て、焼失面積はここ数十年で急減している。これは火災による終末論的主張と矛盾する。
指標が動かないとき、物語が動く
長年、我々は「気候変動」がすでに世界中で火災をより頻繁かつ深刻にしていると言われてきた。しかし、2000年代初頭以降、世界の衛星観測記録は焼失面積の大幅な減少を示している。特に草原やサバンナで顕著であり、森林や農地は低水準で比較的横ばい状態だ。
土地被覆別世界焼失面積(2002~2022年)。低木地・草原・サバンナは減少傾向。森林と農地は低水準で横ばい。出典:Climate Lockdowns
こうして物語は変わる。頻度と深刻度が世界的に協力しないなら、金銭的損失に焦点を当てよ。これは「10億ドル規模の災害」で用いられた手口と同じだ。被害額と物価上昇を追跡し、気候変動のせいだと呼ぶ。
観測データが実際に示すもの
過去の研究では読者に不都合な事実を提示してきた。
- 2023年の米国は静穏 カナダが急増する中:米国の焼失面積は10年平均を大幅に下回ったが、カナダは記録的な年となった…燃料蓄積量・着火要因・管理が支配的であり、49度線を都合よく尊重するCO₂シグナルではない証拠だ。詳細はこちら。
- 森林管理と燃料の樹齢:KNP複合火災の放射性炭素分析によれば、カリフォルニアの大規模火災を助長する燃料の平均樹齢は約40年である。これはCO₂の新物理学ではなく、数十年にわたる鎮火活動による蓄積の結果だ。詳細はこちら。
- 政策と植林地:チリ最悪の火災は「温室効果ガス」ではなく、可燃性の高いユーカリ・マツの植林地と土地利用変化と一致する。詳細はこちら。
- 封鎖論理:カナダの州政府は2025年の火災を根拠に広範な立ち入り禁止を正当化した。しかし全国データは年ごとの大幅な変動を示しており、CO₂に駆動された持続的な増加傾向は確認されていない。詳細はこちら。
これら全ては歴史的記録と一致する。北米の北方林では、現代の火災発生率は1700~1900年代の基準値より低く変動も少ない。地域差は気象パターンや管理状況に起因し、単一の地球規模要因ではない。
メディアが焼失面積ではなく損害額を売り込む理由
損害額は被害面積と価格に依存するが、これらは危険度が横ばいでも上昇する。この「損害額優先」の転換により、編集者は焼失面積が協力的か否かにかかわらず同じ危機的見出しを書ける。
これは気候科学ではなく、気候プロパガンダだ。
崩れ続ける礎
気候変動運動の最も重要な主張の一つは、「気温上昇」ではなく「連鎖的災害の増加」だ。山火事はその典型例とされるはずだった。
しかし長期的な研究は、2023年のような異常な年を経ても、近年の数十年を超えて見れば、現在の火災活動は歴史的な変動範囲内にあることを示し続けている。
最新の論文については後述するが、無料読者向けの結論は単純だ。
- 世界の焼失面積は減少している。
- 費用が増加しているのは、我々が豊かになり、危険地域に建設を増やし、燃料が爆発するまで鎮火を遅らせているからだ。
- IPCCが確信を持って主張した「火災が着実に悪化している」という説は、時代遅れとなった。
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