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「持続可能性」と「気候変動」の活動主義が、『データで見る私たちの世界』の事実を汚す


2024年11月7日 ローダ・ウィルソン 記



『データで見る我々の世界』は、気候変動が農作物生産に与える影響に関する一連の記事を掲載した。


記事の一部は事実を正確に伝えているが、一部は推測の域を出ていない。この研究者は、気候変動のせいで一部の作物の増加率が低く、将来は減少するだろうと推測している。


「これらの主張は、コンピュータモデルの出力や、適度な気温上昇に対する作物の反応についての不当な信念に基づく誤ったものであり、OWIDがこだわるべきは経験やデータではない」とH.スターリング・バーネットは言う。


OWIDの主張とは裏腹に、真実は「CO2濃度の上昇によって作物の収量は増加し、その過程で飢餓は減少している」。


CO2と化石燃料を多用する近代的な農業インフラがなければ、高い収量は得られない。これが、リッチーの『データで見る我々の世界』シリーズから読者が得るべき全体的な教訓である」。



アワ・ワールド・イン・データについて


Our World in Data(「OWID」)は、イングランドとウェールズの登録慈善団体であるGlobal Change Data Labと、オックスフォード大学のOxford Martin Programme on Global Developmentの研究者による研究プロジェクトである。社会史家であり開発経済学者でもあるマックス・ローザーによって設立されたOWIDは、世界の貧困、人権、Covid-19、環境など様々なトピックに関する研究をまとめ、出版することを目的としている。


ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団や四極気候財団など、民間の助成財団からの助成金で運営されている。また、マスク財団、プリツカー・イノベーション・ファンド、ウーバーの共同創業者であるギャレット・キャンプが立ち上げた非営利団体キャンプ財団など、さまざまな「スポンサー」もついている。


OWIDは2014年に発足した。以下のClimate Realismの記事の主題となっている一連の記事を書いたハンナ・リッチーは、2017年にOWIDに加わった。リッチーはスコットランド出身のデータサイエンティストで、オックスフォード大学オックスフォード・マーティン・スクールの上級研究員である。彼女はOWIDの副編集長でもある。彼女の略歴(「CV」)を見ると、OWIDに参加する以前から炭素管理、炭素市場、「持続可能性」に深く関わってきたことがわかる。




気候変動は農作物の収穫量を増加させている
H.スターリング・バーネット著、Climate Realism発行、2024年11月5日



アワ・ワールド・イン・データ(OWID)は、気候変動が農作物生産に与える影響を探るハンナ・リッチーによる一連の記事を掲載した。しかし、記事の一部は、一部の作物の収量が本来よりも減少しており、気候変動のために将来的に減少するだろうという推測に逸れている。後者の主張は誤りであり、コンピュータモデルの出力に異論があることや、適度な気温上昇に対する作物の反応についての不当な信念に基づいている。


リッチーの一連の記事、「作物収量はここ数十年で劇的に増加したが、トウモロコシのような作物は気候変動がなければもっと向上していただろう」、「気候変動は将来作物収量にどのような影響を与えるのか」、「気候変動は食糧生産に影響を与えるだろうが、適応するために我々ができることはここにある」は、概して、作物生産に対する気候変動の現在の有益な影響と、生産量をさらに増加させるために近代的農業技術が発展途上国に広く浸透することの多大な可能性を記述した、データに基づいたよくできた記事である。唯一欠点があるとすれば、気温が上昇しなければ一部の作物に何が起こったか、また将来何が起こるかについて、欠陥のある気候モデルの予測に依存して、検証されていない研究を引用して推測している点である。


リッチーの連載は、穀物や地域的に重要な主食作物の驚異的な成長を指摘し、確かな根拠に基づいて始まっている。リッチーはこう書いている。


気候が食糧生産に与える正味の影響を考えるとき、我々は3つの重要な要因を考慮する必要がある。二酸化炭素濃度の上昇、気温の上昇、降雨量の変化(水が多すぎたり、足りなかったりする)。


二酸化炭素は2つの方法で植物の成長を助ける。


第一に、光合成の速度を上げる。植物は太陽光を利用して、二酸化炭素と水から糖を作り出す。大気中の二酸化炭素が多ければ、このプロセスはより速く進む。


第二に、植物がより効率的に水を利用できるようになる。


さらにリッチーは、CO2濃度が上昇することで農作物の収穫量が増加したことを詳述している。これは、Climate Realismが200以上の記事で指摘してきた事実である。国連食糧農業機関(「FAO」)のデータによれば、小麦、米、とうもろこし、その他の主要穀物は、最近の緩やかな温暖化の間に、収量と生産量の新記録を何度も更新している。


・穀物の収量は52%近く増加し、最新の記録は2022年に樹立された
・穀物生産量は約57%増加した。(穀物生産量は約57%増加した(下図参照)



リッチーは、トウモロコシ、キビ、ソルガムという3つの穀物について懸念を表明し、気候変動がなければもっと増えていただろうと主張している。しかし、それはデータではなく、コンピューターモデルの予測に基づく反実仮想分析に基づいている。彼女は、これらの作物が栽培されている地域の多くが、生育に最適な気温を超えたか、間もなく超えようとしていることを示唆する研究を引用している。しかし、過去1世紀の間に1.3℃から1.5℃の上昇があったにもかかわらず、これら3つの作物はここ数十年の間に、世界的にも、また彼女がCO2施肥の恩恵を十分に受けていないのではないかと心配している熱帯の発展途上アジアやアフリカ諸国においても、大幅な収量の増加を経験している。


トウモロコシに関しては、FAOのデータによれば、1991年から2022年の間に、世界のトウモロコシ収量は約55%、アフリカでは約49%増加している。


キビとソルガムに関するFAOのデータも同様で、過去30年間の緩やかな温暖化の間に、それぞれの作物は世界的に、そしてアフリカとアジア全域で、収量が大幅に増加している(下のグラフ参照)。



気候リアリズムに関する200以上の記事で論じてきたように、世界の穀物生産に当てはまることは、世界中のほとんどの国で、果物、豆類、塊茎、野菜などほとんどの作物に当てはまる。最近の気候変動期間中、収量は何度も記録を更新し、食料安全保障は向上し、飢餓と栄養不良は減少した。


リッチーは、トウモロコシ、キビ、ソルガムの収量は、温暖化がなければもっと高かっただろうとするいくつかの研究を引用している。温暖化の結果、栽培地域の多くが最適気温の範囲外になった。第一に、トウモロコシ、キビ、ソルガムの生育が懸念される地域のほとんどは、赤道直下か赤道付近に位置している。しかし、気候変動理論によれば、赤道直下の地域は気温が上昇する可能性が低く、むしろ極に近い地域で気温が劇的に上昇すると予想されている。懸念される地域の気温上昇がほとんどない、あるいは全くないということは、一部の科学者が推測している最適気温を超えることは問題ではないということだ。


第二に、リッチー氏の言う通り、降水量の変化によって農作物の生産量が減少する可能性があるが、これも心配する必要はない。アフリカやアジアでリッチーが取り上げている地域の多くは、定期的あるいは季節的な干ばつに見舞われている。リッチー氏が指摘するように、CO2施肥は作物の水利用効率を高め、蒸散による水の損失を減らすので、作物は恩恵を受けるはずである。一方、アフリカやアジアの多くの国では、近代的な灌漑インフラへのアクセスが限られているため、作物生産は降雨に依存している。ここで気候変動が役立つのは、ほとんどの研究が示唆しており、国連の気候変動に関する政府間パネル(「IPCC」)が予測しているように、気候変動は降水量の増加をもたらすからである。


第三に、気候変動が農作物に害を及ぼすという主張は、理論的に矛盾している。もしそうなら、気温の上昇はCO2上昇による副産物であり、CO2がなければ気温は上昇しないことになる。しかし、CO2は農作物の収穫量を増加させる重要な要因であるため、CO2の増加がなければ、農作物の収穫量は増加し、増加した場合よりもゆっくりと増加し続けるだろう。この理論では、CO2施肥の恩恵を受けたいのであれば、緩やかな気温上昇を受け入れなければならない。わずかな気温上昇を避けるためにCO2濃度を削減することは、作物収量にとっての黄金のガチョウを殺すことであり、その結果、関連するわずかな気温上昇によってもたらされるかもしれない収量の減少よりも、収量の減少や成長の鈍化が大きくなる。


それではどうなるのか?CO2濃度の上昇によって作物の収量は増加し、その過程で飢餓は減少した。加えて、気候政策によってCO2濃度が下がらない限り、CO2施肥によって収量が増加することは当分ないだろう。


一方、リッチー氏が指摘するように、予測可能な気候変動による農作物への悪影響は、特に発展途上国において、肥料や農薬、近代的な農機具やインフラといった近代的な農業技術へのアクセスが広がれば、それをはるかに上回るだろう。リッチーはこう書いている。


このリスクを軽減し、こうした圧力に対抗するために、私たちができることは他にもある。


今日でも世界には大きな収量格差がある。「収量格差」とは、農家が現在得ている収量と、現在すでに存在する最高の種子、肥料、農薬、灌漑、慣行を利用できた場合に得られる収量との差のことである。


ケニアのトウモロコシの例を見てみよう。農家は現在、1ヘクタールあたり約1.4トンを栽培している。しかし、研究者たちは、農家が現在利用可能な最良の技術と慣行を利用できれば、4.2トンを収穫できると見積もっている。つまり、収量の差は2.8トンということになる。


最悪の気候シナリオでは、ケニアではトウモロコシの収量が20%から25%減少する可能性がある。何も変わらなければ、現在の収量1.4トンは1.1トン程度に減少し、0.3トン減少することになる。


しかし、現在の収量差2.8トンは、気候変動によって予想される0.3トンよりもはるかに大きい。


作物の成長を促進するための化学薬品、害虫から作物を守るための化学薬品、作物の植え付け、水やり、収穫、保管、輸送に使用される機械など、現代の農業は化石燃料の使用に大きく依存している。つまり、農業にとって、化石燃料の使用による農業への気候変動への悪影響の可能性は、化石燃料の使用が食料生産者と消費者に直接もたらす多大な利益の方がはるかに大きいのである。


CO2と化石燃料を多用する近代的な農業インフラがなければ、高い収量を得ることはできない。これが、リッチーの「データで見る我々の世界」シリーズから読者が得るべき全体的な教訓である。